さて、今回は本を読んだ感想ではなく、本の内容に踏み込んで記事を書いてみようと思います。
ネタバレを多数含みますのでご注意ください。
さて考察していくのは昨日読んだ変な絵という作品です。
さて書いていきます。念のためにもう一度。
ネタバレを含みます。それでも良い方のみどうぞ。
まずは本作を語る前に前作の「変な家」について私の感じたことからお話します。
こちらの作品ですが、よくよく考えるとおかしかったり、こじつけのような強引さのある説明が多数あります。しかしそれを気にさせない圧倒的な表現力で物語を最後まで読ませる非常に面白い作品でした。
なぜ、こんなにも読みやすいかというと、伏線はしっかり張ってありその伏線回収がしっかりとされているからだと思います。つまり文章に無駄がなく行動や動機に理屈が付きまとう納得のいくものでした。
さてそんな作者が書いた今作「変な絵」。
前半の物語を読ませる表現力は健在でこちらも非常に読みやすくノンストップで読み進められる物語でした。
しかし、今作は前作に比べて無駄な表現というか、考えさせる文章が多かったと思います。伏線の未回収というか、説明をせず察してもらう。または回答が用意されていないそういった表現が多数あったように感じられました。
ここがこの考察を書こうと思ったきっかけにもなっています。
さて、気になったものは以下の通りです。
1.倉田恵三の孫
2.米沢美羽の母
3.栗原の怪我
4.今野優太が肉が苦手であること
5.麻婆豆腐
1.倉田恵三の孫
まずは簡単なところから。
倉田恵三とは、熊井記者が訪ねた警察の巡査部長です。
世間話の中で孫が生まれるという話をしております。
しかしこのことに対する回収は何もなく本当の世間話で終わってしまいました。
わざわざ文字数を使ってまでなぜこの表現を残したのか?
考えるにはあまりに情報がないため、これ以上考えることはできなさそうです。
次回作への伏線なのでしょうか?
2.米沢美羽の母
こちらも未回収に終わった表現です。
末期がんであると記載がありましたが、それ以外の情報はありませんでした。
こちらが登場した理由を考えると、物語中盤に今野直美と米沢美羽の父が話すシーンがあります。お互いの子供は仲が良く、今野優太には父親がいません。
今野美羽の母が死んでしまった場合、子供を通して今野直美と米沢美羽の父がくっつくと想像させるためではないでしょうか。
全くをもってこの結婚することには触れてはいないのですが、フィクション等ではこういった出会いからくっつくことは多々あるように思えます。そこで、お互いが結婚を考えるとなると同年代であると読者に思わせるためだったのではないでしょうか。
3.栗原の怪我
足の怪我ということでしたが、追っていたブログの真相を知る人物の隣に入院する。非常に都合のよい怪我です。
こちらは物語を終わらせるための最後の会話をするために用意された舞台なのですが、同様の進行はお見舞いという形でも実現できそうです。
そう考えると栗原の怪我については何か別の意図があるように思えてしまいます。
こちらも次回作への伏線なのではないでしょうか。
4.今野優太が肉が苦手であること
これは今野武司が父に無理やりバーベキューの肉を食べさせられたことへの対比になっているのではないでしょうか。
祖母によるエゴにより両親ともになくなり、その祖母も逮捕されてしまった。身寄りのなくなった今野優太に対して手を差し伸べたのは事件の真相を突き止めた熊井記者でした。
熊井記者だけでなく米沢親子も手を差し伸べた。また自分の意見を尊重してもらえるという今作の数少ない救いの描写なのではないでしょうか。
5.麻婆豆腐
さて、突然出てきたこの麻婆豆腐。何かというと今野直美が今野優太を叱った後作成した料理です。何気ない日常の風景ではありますが、この麻婆豆腐仏壇に供えられたのです。
気にせず読んでしまった人も多いのではないでしょうか。
仏壇に供えるものとしてこの麻婆豆腐はとても不適切な食べ物です。
まず肉が使われているということ。
精進料理を代表するように、無益な殺生をしてはいけないというのが仏教の教えです。そのためお供え物に肉を入れるということは普通しません。
さらに、麻婆豆腐といえばニンニク・にら・ネギといった香りの強い薬味も入っています。これらは五辛の食べ物としてお供えをしてはいけないものの代表となります。
これは日常の様子を書いていると見せかけて、今野直美の異常な価値観を表していたのではないでしょうか。
以上が読んでいて気になった点になります。
まぁ娯楽小説だと思うのでそこまで深い意味はないと思いますが、今私が思うのは以上になります。これ以外にも面白い意見がありましたら是非教えていただきたいものです。